2023.07.11 - Written by BROWN Jr.
COLUMN /
DIKTATOR /
H8CALL /
HARDCORE /
HOOD /
LIVE /
ZAP THE ALL TOWN /
台風が近づき、まとわりつく湿気が覆う初夏の新宿。NEW AGE CREATIONを掲げる、北郊外三つ巴がハンドリングするCARAVANが動き出す。
2020年12月にリリースされたスプリットアルバムの2年半越しのリリースイベントは、各地からこれからのシーンを担う同志たちを集め、ハードコアの聖地 新宿ANTIKNOCKで盛大に行われた。Photo by BROWN Jr. (DIKTATOR)
期待と熱量に満ちたこの日の口火を切る一番手トップバッターは、先日の1st Showでもフロアを沸かせた今一番ホットなバンド、東京NYHCスタイルDOZEONE。ど頭から気合い十分なフルボルテージのパフォーマンスは、オープンと同時に入った多くのキッズたちを動かしピットは一気に沸点に。
バンドのどっしりとした固いグルーヴは、イベントとしてのグルーヴ感とリンクする予感を与え、最高のスタートを切ってくれた。
続く2番手は大阪のビートダウンヤングスタUNHOLY11。青く光る暗闇から放つ重量級なサウンドと、そこに被せ貫くボーカルGKTの咆哮はフロアの熱量を更に一段階引き上げた。
ドロドロと臓器に響くビートダウンの応酬と、ファスト&ミドルテンポパートの落差はそれだけで大きなグルーヴとなり、特にそれが顕著に見られたラスト2曲はモッシャーの振るう腕を止めさせなかった。
3番手は東京神奈川の暗黒ヘヴィネスBelmadigula。前バンドの青に対し赤い暗闇の中にギターとベース合わせて5台のアンプキャビネットの要塞を構え、その前に合掌し鎮座するボーカルLIL-D。それまでと明らかに異質でカルト集団のような不気味さを感じるその佇まいで、会場の空気を一変させた。
固定概念に囚われず延々と拷問のようにズルズルと引きずる展開は、ライブハウスはもちろんスタジアムのような規模でも見てみたい。
4番手は東京神奈川クロスオーバーグルーヴHC、Murakumo。直前でアナウンスされた、ボーカルPhill脱退前の残り2本うちの1本。持ち前のハイテンションなステージングそのままに、フロアの熱量も一気にマックスに。ダイブ・シンガロングにモッシュの全部盛りで、上がり続けた会場のボルテージがこの時点での一つピークに達した。
さながらMurakumo来日公演なステージでイベントのギアを上げてくれた。
5番手はDIKTATORと同郷で盟友のDビートノイズ 菩來(BORAI)。赤く黒い空間に轟くノイズの洪水。スパークするDビートと頭をカチ割る轟音ノイズに、正面から噛み付くボーカルPeyashiの咆哮。それまでの場の流れに媚びない硬派でストイックな姿を見て、仙台ハードコアの聖地2代目バードランドでのライブの空気感を少し思い出した。
6番手は東京パワーバイオレンスSoiled Hate。NEW WAVEを冠しているだけあり、一辺倒ではない曲構成がユニークで次にどんな展開が来るのかワクワクしながら見れるバンド。縦横無尽に動き回るツインボーカルとそれに呼応するフロアのカオス。この日も菩來から続く岩石をガリガリと削るような空気感を引き継ぎ、時にグルーヴィなノリを見せながらフロアを揺らしていた。
7番手は山形は新庄からロックンロールバンドOld Friend。それまでの空気と打って変わりアメリカ西海岸のジュークボックスの似合うバーが思い浮かぶような、メロディアスなカントリースタイルでフロアをロックしていた。地元のHCシーンMuddy Beach, D.N.K.などから受け継ぐハードコアのバックボーンもある彼ら。堂々と凛とした出立ちは、東京のHCシーンに自身の存在を大きく印象付けたのは間違いない。
そしてここからはNACの時間。まずは仙台が誇るビートダウンキングDIKTATOR。軽快なモンクのピアノのSEから始まるWe Gainで幕を開け、Knockに続くNACセットで会場の温度を一段引き上げた。この日一番の荒れ模様で、フロア後方のステップまで広がったピットは腕振る隙間が無いほどモッシャーに溢れていた。POA TDR氏のfeat曲IGNITIONは、NAC特別仕様でH8CALL Billy Bがこれでもかとフロアを更に焚き付けた。1番手から上り続けたボルテージはまだまだ下がる気がしない。
(筆者で撮影者のBROWN Jr.が演奏中のため、ここはこの後出てくるH8CALL中の写真でお届け)
トリ前は下館からオルタナティブハードコア/ロックバンドZAP THE ALL TOWN。その謎に包まれすぎていたステージは、あの日いた誰もが待ち望んでいた瞬間だったはず。空間に音をゆっくり並べるように弾く、Yuta Iidaの浮遊感あるアルペジオから始まるOBEでスタート。慣れないイヤモニを頼りに語りかけるように歌うKZYと、豊かでコシのあるベースサウンドで主張するように支えるZap-k。2曲目に披露した新曲では終始新しいハードコア/ロックサウンドを提示し続け、終盤に畳み掛けた変拍子の壁は頭を抱えるほど変態的でカッコよかった。締めのMONADカバーでは、DKTとH8Cから両ボーカルがfeatしお祭り状態。何も聞いてなかった筆者は思わずダイブ&フルスイングでしっかり負傷。持ち曲少ないながらに一つずつ丁寧にフロアを散らかしいよいよ大トリへ。
最後はお待ちかね會津が産んだグルーヴモンスターH8CALL。開演の音が鳴るなりまずは、DOZEONEのTakumiがマイクを握りフロアに火をつける。その後Billy Bが握り返すとH8CALL特有の腰にくるうねるグルーヴで、フロアもステージも袖も大きく波打たせていた。袖に集まった多くの仲間が見守るなかで繰り広げられるライブは、彼らの隠しきれないカリスマ性を感じるには十分だった。俺は楽しそうに力強く顔で弾くギター陣がすごい好きだし、それを必死に太く支えるリズム隊もグッとくる。そして何よりそんな粒が立つメンバーを一番前で頼もしく引っ張るボーカルBilly Bはとても華がある。音はもちろん目からもグルーヴを感じるバンドはなかなかいない。それは彼らが普段から共にする時間が圧倒的に長く、それが音やスタイルに表れてるということでまさにハードコア、ライフスタイルなんだと思う。
下がる気配のないイベント全体のボルテージは、曲を追うごとにさらに加速し会場からワンモアの声が止まらない。間髪入れず始めたDon’t Bring Me Downでは、今度はDKTとZAPの両ボーカルもマイクを握りイベントのラストに華を添える。シンガロングにウィンドミルにダイブにと、NACメンバー全員でぐちゃぐちゃになり終演。
目の前には求めていた光景があった。それぞれの地元でもなかなか見たことのないような最高の盛り上がりを、仲間と共に乗り込んだ東京で最大限に見せ付けられて嬉しかったし、何よりホッとした。オープンからクローズまで、ステージもフロアも終始ギラギラした目のヤングで賑わったこの日。NEW AGE CREATIONが仕掛けるパーティとして、これ以上ないスタートを切れたんではないかと思う。
NACメンバーの意志・気合を受け止めた同志たちは、ステージでハチ切れんばかりのライブを行い、それに呼応するフロアはモッシュにダイブにシンガロングと、各々の楽しみ方でカオスに。そしてフロアを一歩出たバーカンでは酒を片手に仲間と語らう姿。ハードコアの現場で当たり前のそれらもこの日はより一層特別に感じた。
その中でも嬉しかったのは、やはりCARAVANに乗り込んだ同士たちのその熱量だ。それまでの告知や普段の会話、このWEBサイトやポッドキャストでNACメンバーの想いを聴いた彼らは、ステージでフロアでそれに応えてくれた。
ど頭のDOZEONEのベースのTakumiの出音1音目からそれを感じ、それを受け取ったUNHOLY11がまた次のBELMADIGULAに繋ぐといった具合に、時間を追うごとにそれが増していくのが肌でよく感じた。これがライブだと思うし、これがイベントを組むってことなんだなと再認識。目に浮かぶ予定調和がない空間が、あそこにはあった。
もちろんNACの目的は楽しいイベントを組むってことだけではない。日本のハードコアの裾の尾を広げるという、大きく険しい道がただ目の前にある。すぐに変えられるものではないし、明確な有効策に溢れているわけでもない。一つ間違いないことは、自分で考え続けてそれを行動に移すことでしか状況は変わらないということ。そしてそれに共感してくれる仲間を増やし、それぞれがまたそれぞれの考えを元に動いていくことで、それは更に広がり繋がっていくということ。
自分がいる環境を少しでも良くするために動くのは、生物として当然のことだと思う。俺らは止まらないし止まれないCARAVANに乗ってしまったようだ。でも俺らだけじゃどうにも数が足らない。みんなの協力が必要です。
数年後大きく景色が変わってることを祈って動き出した第一歩。乗り遅れないようご注意ください。
【NEW AGE CARAVAN -Chapter.1-】
NEW AGE CREATION PRESENTS
SPLIT EP RELEASE BASH
2023.06.10 / 新宿ANTIKNOCK
H8CALL
ZAP THE ALL TOWN
DIKTATOR
BORAI (菩來)
OLD FRIEND
UNHOLY 11
SOILED HATE
BELMADIGULA
MURAKUMO
DOZEONE
—
NACの最新情報はSNSなどで随時発信していますので、ぜひチェックしてみてください。
BASEではこの日に発売されたオリジナルTシャツや手拭いをはじめ、レコ発・プロジェクトの元になったスプリットCDも販売しています。
Twitter : @NEWAGECREATION_
Instagram : @NEWAGECREATION_
BASE : https://nac03.base.shop/
NEW AGE CARAVAN vol.2 - イベントレポ-
2024.11.14 -
COLUMN / HARDCORE / LIVE /
【BROWN Records】BULLDOZEは聖書みたいな存在。人やその時々でも感じ方が変わる特殊なバンド。- AVE “Mosh Sommelier”コラボ企画 後編 –
2024.08.22 -
BROWN Records / COLUMN / HARDCORE /
【H8CALL】1st アルバム 『Gr∞ve Of Crew』 について
2023.10.06 -
COLUMN / H8CALL / HARDCORE / INFO / LIVE / NEWS / RELEASE /